第20回全国高校生ポスターコンクール審査結果
テーマ ~ まつり ~
上位受賞者へ向けて
U.G.サトー(グラフィックデザイナー)
新型コロナウィルスが蔓延する今にもかかわらず、「まつり」をテーマに全国の高校生から多くのポスターが寄せられたことを喜びたい。ここでは各賞に選ばれた10点のポスターに対して、それぞれを講評してみよう。
最優秀賞
タイトル:まつりが来るぞ
氏 名:橋本 大我( 福井県立丹南高等学校 3年)
現れたのは全身眞赤な鯛男。祭りの団扇を片手に金魚入りのビニール袋をぶら下げて…。踊って食って遊んでの語句の間に日本の祭りを揶揄するユーモアが漂っている。今回そんな傑作ポスターが生まれたことを喜びたい。
U.G.サトー賞
タイトル:ハ レ
氏名:小島 虎之助(栃木県立今市高等学校 3 年)
神輿をバックにひょっとこ男を真正面に登場させて、ハレの日の喜びをシンメトリカルに構成した画面は魅力的である。赤茶色の画面の中で反対色の明るいブルーで、ハレ男の着衣やロゴを表現した構成力は群を抜いていることに驚く。
岐阜県知事賞
タイトル:提灯
氏 名:松井 鴻葵(鳥取県立倉吉総合産業高等学校1年)
漆黒の闇の中を上下2段で並ぶ提灯の列を大胆に描いたもの。「提灯は祭りの・・・」の下段のキャッチフレーズは、もっと丁寧に描いてレイアウトしてほしかった!
大垣市長賞
タイトル:集う喜び
氏 名:稲垣 茉莉 (名古屋市立名東高等学校2年)
今は無理だが、やがて多勢で集いたい!集う喜びを夜空に向けた様々な掌にスポットを当てて表現した美しいポスター!
大垣市教育長賞
タイトル:わっしょい
氏 名:南部 綾音( 福井工業大学附属福井高等学校 2年)
タイポグラフィカルに「わっしょい」の掛け声を画面いっぱいに散りばめてカラフルで楽しいポスターにしています。
優秀賞
タイトル:花色幻燈
氏 名:林 綾華 (静岡県立御殿場高等学校 3年)
金魚や祭りの柄を合わせて幻想的な世界の再構成! 黒を生かしてなかなかのパターンです。
優秀賞
タイトル:あっ、逃げた!
氏 名:杉本 ひまり(福井工業大学附属福井高等学校 3年)
幼い日、祭りの金魚すくいで遊んだ一瞬を思い出した一枚? 描写力のあるなかなかの表現ですが、もう一踏ん張りしたいところ!
優秀賞
タイトル: 舞い踊る
氏 名:佐藤 彩里(福岡県立太宰府高等学校 1年)
豊作への感謝の気持ちを米粒のような三女に託した美しい構成のポスター。
優秀賞
タイトル: 来年こそ。
氏 名:中西 彩(大分県立芸術緑丘高等学校 2 年)
よく意味がわからない? 射的で悪をやっつけて、地球再生を試みたいのかな?
受賞作品の特徴
髙木 毬子(同志社女子大学メディア創造学科 准教授)
デザインには時代性(時の風潮)を視覚化する力・素質がある。ポスターデザインに取り組む作者の経験・感情によって表現が左右される。
全国高校生ポスターコンクールで度々選ばれてきたテーマ「まつり」にも、2年目に入ったコロナ禍の影響が見られた。 提出された多くの高校生たちが描く「まつり」のポスターからはどことなく寂しい雰囲気が漂ってくる。記憶の中の懐かしい祭り、そして近い将来、地元の仲間たちと距離を保たず集まって楽しむことへの憧れが読み取られる作品が多かった。
その中、橋本大我さんのデザインが審査員の目を引いた。余白をしっかり取っているデジタルで制作されたデザインは着飾ることなく、ユーモアがある。キャッチコピーの「食って」、「踊って」、「遊んで」は「まつり」の基本を率直に伝えている。見ていて思わず微笑んでしまうデザイン。
デザイン制作、具体的にはポスターデザインを通し、言葉ではなかなか伝えづらい自身の思考や概念を可視化しすることはコミュニケーションの1つの重要手段であり、時代の記録にもなる。
【 審 査 員 】
U.G.サトー(審査員長・グラフィックデザイナー)
堀冨士夫(日本国際ポスター美術館 館長)
竹内治彦(岐阜協立大学 学長)
山本 譲(大垣市教育長)
髙木毬子(同志社女子大学准教授)
宮川友子(大垣女子短期大学講師)
桐山岳寛(大同大学講師)